生成AIは難しくない

AI

情シス部長が断言する、中堅企業のAI活用の始め方


AIは難しい、と思っている。

それは正しい。機械学習、ディープラーニング、LLM——ちゃんと理解しようとすると確かに難しい。勉強しようと本を買っても、読み終わる前に内容が古くなっている。そんな経験をした人も多いと思う。

でも「生成AI」は別物だ、というのが私の実感。

インターネット、スマートフォン以来の技術革新だと個人的には見ています。製造業の情シス部長として現場でAI活用を実践してきた経験から、そう断言できます。難しく考えなくていい。生成AIから始めればいい。その理由を書きます。


AIはなぜ「今回だけは違う」のか

新しい技術が出るたびに「これからはXXの時代だ」と騒がれてきた。気づけばブームが去り、静観していた企業が正解だったことも多い。

だから「AIも同じでは?」と思う気持ちはわかる。

でも今回は違うと思っている。

インターネットが登場したとき、情報の流通が根本から変わった。スマートフォンが登場したとき、人々の行動様式が根本から変わった。そして生成AIは、「知的作業」そのものを根本から変えつつある。

文章を書く、資料をまとめる、アイデアを出す、コードを書く、翻訳する——これらはすべて「人間にしかできない仕事」とされてきた。それが今、AIで代替・補完できるようになっている。

インターネットやスマートフォンに乗り遅れた企業がどうなったか。AIも同じ構図になると私は見ている。

しかも今回は、大企業だけが恩恵を受ける話ではない。ChatGPTもClaudeも、無料または月数千円から使い始められる。基幹システムの導入に数千万かけてきた時代とは、コスト構造が根本から違う。中堅企業が「予算がないから」と言い訳できない、初めての技術革新だと思っている。

なぜ「AIは難しい」と感じるのか——進化が速すぎる問題

「AIを勉強しよう」と思って本を買ったら、読み終わる前に内容が古くなっていた——そんな経験をした人は少なくないと思う。

これは勉強不足ではない。AIの進化が速すぎるのだ。

2023年にChatGPTが登場してから、主要なAIモデルのアップデートは年に何度も行われている。半年前の「最新情報」がすでに時代遅れになっているケースもある。技術の専門家でさえ全容を把握しきれない速度で進化している。

だから「完全に理解してから使おう」という姿勢は機能しない。理解が追いつく前に、また新しいバージョンが出てしまう。

「完全に理解する」ことを目標にするのをやめることが、AI活用の第一歩だと思っている。

少し前まで、AIはチャットで相談するだけのツールだった。絵を描いてもらおうと思ったら別のサービスを使わないといけなかったし、フォルダの整理をしてもらおうとしても、コードを書いてもらうだけで実行は自分でやらなければならなかった。それが面倒で、自動化フローのツールを導入しようかと検討したこともある。

それが今では、「Excelシート10個をひとつのリストにまとめて」と言うだけで、実行までやってくれる。

正直、行きつくところまで来たんじゃないか、とすら感じる。でもおそらく、これがゴールではない。だからこそ「理解してから使う」を待っていたら、永遠に使い始められない。

「AI」と「生成AI」は別物——生成AIは驚くほど使いやすい

「AI」と聞くと、機械学習システムや自社開発が必要な複雑なシステムを想像する人が多い。確かにそういった「AI」は専門知識がなければ扱えない。

正式には、生成AI(ChatGPT、Claude、Geminiなど)は全く別物だ。

使い方はシンプルで、日本語で話しかけるだけ。プログラミングの知識も、データサイエンスの知識も不要です。

「この会議の議事録をまとめて」
「この企画書の改善点を教えて」
「社員向けのセキュリティ研修の資料を作って」

これだけで、数分以内に実用的なアウトプットが返ってくる。

私が現場で生成AIを使い始めたとき、正直驚いた。ITの専門家である私が驚いたのだから、現場の社員が「こんなに簡単なのか」と感じるのは当然だと思う。

個人で使う分には、生成AIは確かに簡単だ。アカウントを作って、話しかけるだけ。それは本当にそうだと思う。

問題は、企業で使えるようにするのは全く別の話だということだ。セキュリティポリシーの策定、利用ルールの整備、情報漏洩リスクの管理、現場への展開と定着——やることは山ほどある。

経営層は個人利用の感覚で「入れればすぐ使えるだろう」と思う。現場は「難しくてわからない」と言う。情シスはその板挟みで、一番苦労する。

この構図を理解しているかどうかが、企業のAI活用が進むかどうかの分岐点だと思っている。

中堅企業が生成AIで成果を出した3つの使い方

「使いやすい」とわかっても、何に使えばいいかわからない——そこで、実際に中堅企業の現場で成果が出た使い方を3つ紹介する。

使い方1:議事録・報告書の作成

会議の録音やメモを生成AIに渡すと、整理された議事録を数分で作成できる。

ただ、生成AIに渡すだけだと「めんどくさい」が解消しない。私がやっているのはスマホ・話者分離・生成AIの組み合わせだ。スマホで会議を録音して、話者ごとに分離したテキストを生成AIに渡す。会議が終わって自席に戻るくらいの時間で、議事録が出席者全員に送られている状態を作っている。

会議ツール付属の文字起こし機能でも同じことはできる。ただZoom・Teams・Meetとツールがばらばらだと、文字起こしの保管場所もばらばらになる。会議ツールに依存しない方法を模索した結果、スマホ録音に落ち着いた。どのツールで会議をしても同じフローで動く、というのが決め手だった。

「即座に届く」という体験が現場に刺さる。議事録を書く手間がなくなるだけでなく、「会議の記録が残る文化」が自然に根付く。

使い方2:社内ドキュメントの作成・改善

規程、マニュアル、提案書、お知らせ文——こういった社内文書の作成は、意外なほど時間を取られる業務だ。

特に情報セキュリティ活動をしていると、規定書やガイドラインを次から次へと作らなければならない。以前はゼロから書いていたので、1本仕上げるのにかなりの時間がかかっていた。それが今は、生成AIにたたき台を出してもらってから修正する形に変わった。工数はまったく違う。しかも品質も上がっている。抜け漏れや表現のばらつきが減るからだ。

「ゼロから書く」から「たたき台を直す」に変わるだけで、これだけ変わるとは正直思っていなかった。

使い方3:情報収集・要約・翻訳

海外のセキュリティ情報、技術トレンドのレポート、英語の製品仕様書——読む時間がなくて後回しにしているものが山ほどある。

生成AIに「この文書の要点を日本語で3つにまとめて」と頼むだけで、即座に要約が出てくる。情シス部門では特に、英語の技術情報やセキュリティ脆弱性情報を素早くキャッチアップする必要がある。生成AIはその強力な助けになる。

タイミングの正解——「完璧を待つな、今すぐ使え」

ただ、様子見にも一理あった面はある。ChatGPTが出た直後、企業利用はAzure OpenAI経由が事実上の標準という空気があった。構築コストも運用コストもかかる。あの時期に急いで導入した企業は、相当なコストを使っただろうと思う。

今は違う。ChatGPT EnterpriseもClaude Coworkも、追加構築なしで企業利用できる選択肢が整ってきた。「様子見していた企業が正解だった」という側面も、正直あると思っている。だからこそ今が、動き始めるタイミングだとも言える。

「もう少し技術が成熟してから導入しよう」

その判断が今後も正解かというと、そうは思わない。

生成AIは今この瞬間も進化している。半年後にはさらに便利になっているだろう。だからといって半年待つべきかというと、答えはNOだ。

使い始めた組織と、様子見を続けた組織の差は、時間とともに広がるからだ。

生成AIは使えば使うほど、社内にノウハウが蓄積される。「この業務にはこう使うと効果的」「ここは人間が確認する必要がある」——こういった知見は、実際に使い続けた組織にしか蓄積されない。

ツールが進化しても、組織の使いこなす力が育っていなければ意味がない。逆に言えば、今から使い始めた組織は、ツールが進化するたびに恩恵を受け続けられる。

今すぐできる最初の一歩

難しく考えなくていい。

  1. ChatGPTまたはClaudeの無料アカウントを作る(5分)
  2. 明日の会議の議事録作成に使ってみる
  3. 使った感想を周りと共有する

これだけでいい。社内規程の整備も、セキュリティポリシーの策定も、予算の確保も——最初は後回しでいい。まず使ってみることが最優先だ。

※ただし、社外秘・個人情報を含む情報は入力しないことだけ守ってほしい。これだけが最初の唯一のルールだ。

まとめ:乗り遅れた企業と乗った企業、3年後の差

インターネットが普及した1990年代後半、「うちにはまだ早い」と様子見をした企業の多くは、2000年代に入ってから慌てて追いつこうとした。スマートフォン対応でも同じことが起きた。

AIでも同じ構図が、もっと速いスピードで起きようとしている。

3年後、生成AIを使いこなしている組織と、まだ様子見をしている組織では、業務効率・意思決定の速さ・人材の質、あらゆる面で差がついていると私は見ている。

問題は「乗るかどうか」ではなく「どう乗るか」だ。

生成AIから始める。小さく使って、社内にノウハウを蓄積する。完璧を目指さず、まず動く。それが中堅企業にとって現実的で、最も成果が出る乗り方だと思っている。


この記事を書いた人
mickeyさん / 製造業 情報システム部長製造業の情シス部長として、セキュリティ×AI活用を現場で実践中。経営層・管理職が使える言葉でDX・AI・セキュリティを発信しています。

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